角版と切り抜きで気を付けたい画像補正のポイント。

雑誌やチラシを眺めていても、他社から支給される画像の中にも、“あれ?そこ気にしないの?”と感じる画像があります。「意外と気にしてない人が多いかもしれない」細かいけれど重要な角版と切り抜きそれぞれで気を付けたいポイントを解説します。





角版で使用する場合の注意点

ハイライトを設定する時の3つのポイント

まずは「意外と気にしてない人が多いかもしれない」ハイライト(白)の設定についてです。

ポイント1

次のサンプル画像を使って解説します。
全体に少し青みがかっているので、スッキリとさせて主役の車を綺麗にしてみましょう。

サンプル画像1

サンプル画像1

全体の色カブリを取り、この画像の主役である車の白も綺麗になりました。しかしながら、左上の雲の部分の数値はR・G・Bすべて(255)で雲の濃淡も飛んでしまった上、地の白と同化して境目が判らなくなってしまいました。これではいくら主役を綺麗にできたとしても角版の画像としてはNGです。画像の一部分だけを見て補正してしまうとこういったことが起こります。
サンプル画像の補正1
車を一番明るい部分として設定し他の部分が飛んでしまったのであれば、車は一番明るい部分ではないということになります。この画像では雲が一番明るい部分で、尚かつ画像の端にありますから飛ばさないように調整します。そうなるとハイライトはこれ以上動かせませんので、主役の車を明るく白くする為に[トーンカーブ]を駆使して補正します。
サンプル画像の補正2
雲の一番明るい部分の数値を[情報パネル]で見てみましょう。飛ぶ一歩手前でバランスもニュートラルな白になっていますね。例えば(R・G・B すべて248)と(R・G・B すべて255)では、一見同じ白に見えますが、まったく何もない0%と、数%でも色が入っているものとでは、このような場合に影響が出てきますので注意が必要です。

補正結果情報パネル

ポイント2

他の画像でも見てみましょう。
この画像の中央辺りは逆光のキャッチライトになっています。[情報パネル]でもR・G・Bすべて(255)になっており、完全に飛んでしまっていることがわかります。逆光の強い光を表現するため完全に飛ばしてはいますが、画像の中央にありますので角版として使用するのはもちろん大丈夫です。仮にこれが画像の端にある場合は、例え逆光の強い光を表現したいとしても、サンプル画像1のように飛ぶ一歩手前くらいの数値にしておきます。
サンプル画像2

キャッチライトとは?
人物の撮影で瞳に光を入れるのもキャッチライトと呼びますが、印刷用語では網点がまったく入っていない白く抜けたハイライトのことを指します。
※キャッチライトとハイライトの詳細についてはまた別記事で解説します。

ポイント3

もう一点、別の画像も見てみましょう。
天気も良く気持ちの良い画像ですので、なるべく明るくしたいですね。
この画像の一番明るい部分(白)は、左手のグローブ、左足の靴、ゴルフボールです。数値はR・G・Bすべて(255)で白く抜けた状態まで明るくしていますが、白の範囲が狭いため特に目立つ訳ではありませんし、他にも影響はありませんね。
このように、強い光を表現するキャッチライトでなくても白を飛ばしてしまって良い場合もあります。
サンプル画像3

ポイントまとめ

以上のように、角版でハイライトを設定する時はハイライトの「1.数値」「2.位置」「3.範囲」この3つのポイントに気を付けながら設定しましょう。さまざまな画像、さまざまな表現がありますので、基本的には臨機応変な対応になりますが、一般的な画像を補正する上でのひとつのお約束という感じで覚えておいてください。

切り抜きで使用する場合のポイント

次は「意外と気にしてない人が多いかもしれない」切り抜き画像についてです。
次のサンプル画像を使って解説します。

サンプル画像2

サンプル画像2

一点の画像として成立するように

切り抜きには切り抜き用の補正を

画像を切り抜きで使用する場合、下図のように普通に対象物を切り抜いてそのまま使用してしまっているケースをしばしば見かけますが、残念ながらこれでは画像として不十分です。何が不十分なのかと言うと、「切り抜き」のやり方ではなくもちろん「補正」のお話しです。
サンプル画像2切り抜き
ちょっと話がそれますが、私が駆け出しスキャナーオペレーターの頃、先輩から「“良い画像”(あの頃は写真と言ってました)ってどんな画像だと思う?」と質問されました。何と答えたかは憶えていませんが、答えは「明るい部分・中間の部分・暗い部分がバランスよくある画像」でした。要するに、人間の目は明るい部分と暗い部分があって立体として認識するわけで、常にそこを意識しながら補正(当時は色分解)しなさいということですね。もちろん被写体によっても、明るい部分ばかり、暗い部分ばかりの画像はありますが、それをどうバランス良く立体的に見える画像にしていくかが腕の見せ所、みたいな話です。

角版には角版の、切り抜きには切り抜きの、それぞれに補正のやり方・考え方があります。角版の場合は画像全体を見て補正しますが、切り抜きの場合は切り抜くその対象の中で、先ほどの先輩の話にあったように「明るい部分・中間の部分・暗い部分」を表現しなければいけません。

補整の対象範囲

左:角版で使用する場合 右:切り抜きで使用する場合

それでは切り抜きで使用するための補正をしてみましょう。
[トーンカーブ]でヘッドフォンの中の一番明るいところ(ハイライト)を飛ばし、ハイライトから中間調にかけてカーブを立てS字カーブにしました。シャープネスなどの処理はしていませんが、シャープになり立体感も出ましたね。
サンプル画像2ビフォアアフター

ハイライトの切り方、S字カーブに関してはトーンカーブを制する者は画像補正を制す!【明るさ・コントラスト編】をご参照ください。

角版の場合はきちんと気を遣って補正しているけれど、切り抜き使用になるとこの辺りが疎かになっているケースは意外と多いです。“角版でレイアウトしてたけどやっぱり切り抜きで使おうかな”なんてこともよくある話だと思いますが、そんな時も面倒がらずに、どんな画像でも一点の画像として成立するよう丁寧に補正しましょう。
※ちなみに、先述の「ハイライトを設定する時の3つのポイント」は、角版だけでなく切り抜きの場合でも当てはまります。

最後に

以上、私が感じる「意外と気にしてない人が多いかもしれない」細かいけれど重要な気を付けたいポイントでした。今回は小ネタ的な感じでしたが、この小ネタの積み重ねが大切だと思っています。

画像補正は奥が深いものです。もちろん私の文章力にも問題がありますが、なかなか“これです”と簡単に説明できるものではありませんので、今後も気付いたことがあったら、ピックアップして小ネタとして取り上げていこうと思います。