トーンカーブを制する者は画像補正を制す!【明るさ・コントラスト編】

前回の記事【Photoshopはもうあちこちいじらない!画像を構成する3つの要素を理解しよう。】の「トーンのセクション」について2回に分けて詳しく解説します。大袈裟なタイトルにしやがってと思ったあなた、それがそうでもないんです。画像補正は「トーンのセクション」をどうコントロールするかで決まると言っても過言ではありません!





トーンコントロールで意識すべきポイントと領域

トーンコントロールは、下図に示した2つのポイント(1.白色点・2.黒色点)と3つの領域(3.ライト側・4.中間調・5.シャドー側)を意識しながらコントロールするようにしましょう。
「明るい部分はそのままで暗い部分だけ明るくしたい」「もっとコントラストをつけたい」などの詳細なコントロールをするために必要になります。

赤く示した対角線は基準線、現在の画像の状態を表しています。つまり、ここをゼロとして、これからどう補正していくのかという基準です。
トーンカーブ調整5つのポイント

上のサンプル画像は、この画像の現在の状態をそれぞれの領域で色分けしたものです。
(緑:ライト側・赤:中間調・青:シャドー側)

カーブの動きと効果を理解しよう

全体の明るさを調整する

全体の明るさを調整したい場合には、カーブの中央辺りにコントロールポイントを打ち上下させます。
では、なぜ中間のポイントを上下させただけで画像全体を調整することができるのでしょうか?

中間カーブの動き
中間ポイントを上に移動する(明るくする)と、中間調だけでなく、ライト側とシャドー側もそれに伴って移動しています(赤で塗った部分)。色分けした画像を見ても、上の元画像に較べてライト側(緑)の領域が増え、中間調(赤)とシャドー側(青)の領域が少なくなってるのが判ります。白色点(ハイライト)・黒色点(シャドー)はそのままで、全体的に明るくなり、軽く柔らかい印象になりましたね。
逆に暗くしたい場合はコントロールポイントを下に移動します。

ちなみに、コントロールポイントは、カーブの中央に打たなければならないという訳ではありません。画像の状態や、どういう効果を求めるかによって、ライト側やシャドー側、どこに打っても構いません。

明るさを自由に調整する

調整したい領域または調整したくない領域、それぞれにコントロールポイントを打つことで、任意のカーブを作ることができます。

コントロールポイントを打つ際の注意点

NGのトーンカーブ
基本的に、コントロールポイントは何処にいくつ打っても構いませんが、画像は明るい部分から暗い部分までの階調・グラデーションで作られています。[トーンカーブ]はこの階調・グラデーションを操作しているものなので、特殊な効果を出したい場合意外は、このように極端な急カーブや蛇行しているような不格好なカーブを描いてはいけません。「ここをこうしたいからここに打つ」というきちんとした理由で「美しいカーブ」を作るよう心がけましょう。

シャドー側の明るさはそのままで、ライト側を調整したい場合は次のようなカーブになります。
ライト側から中間調にかけてコントラストが強くなりました。

ライト側から中間調を明るく

ライト側のみ明るく

逆に、ライト側の明るさはそのままで、シャドー側を調整したい場合は次のようなカーブになります。
中間調からシャドー側にかけて明るくなり、コントラストも弱くなりました。

中間調からシャドー側を明るく

シャドー側のみ明るく

このように、明暗を自由にコントロールすることでコントラストの調整も可能になります。
もうお気付きですね、そうです、これがいわゆる「S字カーブ」というヤツです。
この詳細については後述します。

コントラストを調整する

コントラストとは明暗の差。明暗の差が大きければコントラストが強い(高い)、差が小さければコントラストが弱い(低い)という表現をします。
ヒストグラム
上のような画像はどうでしょうか? 全体に締まりがなく平坦な画像ですね。これはコントラストが弱い画像、業界では「眠い」なんて言ったりもします。

ではまず、この画像がどんな状態の画像なのかを見てみましょう。[トーンカーブ]の[表示][ヒストグラム]にチェックを入れると、山のような形が出てきます。これが[ヒストグラム]です。
[ヒストグラム]とは画像の明るさの情報を棒グラフにしたもので、横軸が明るさ、縦軸がピクセル量になっています。これを見ることでこの画像が現在どんな状態なのかを判別することができます。

この画像の[ヒストグラム]を見ると、山が中間調からライト側にかけて集中して高くなっており、A(ライト側)とB(シャドー側)の部分には山が無くスッポリと抜けています。つまりこの画像は、ハイライトもシャドーも無く、中間調だけで構成されている画像だということが判ります。

それでは、この画像にコントラストを付けてみましょう。
トーンカーブの下にある三角形を山の端までそれぞれ移動させてみると、白色点と黒色点が移動し、対角線が急な角度に起ち上がりました。眠かった画像がクッキリとし、立体感も出ましたね。
※三角形を山よりも内側に移動させると、ハイライトが飛んだりシャドーが潰れたりしますので注意が必要です。
コントラストを付ける

解りやすいようにもっと極端にやってみます。

カーブを立てる

カーブを立てる

カーブを寝かせる

カーブを寝かせる

 

このように、カーブを立てれば明暗の差は強くなり、逆に寝かせると弱くなります。コントラスト調整の肝はカーブの角度だということが解ります。



カーブを自由にコントロールする

カーブには理由がある

画像補正は「◯◯を◯◯にしたいから◯◯を調整する」という理由が必要です!
なんて、そこまで堅苦しくやるものではないので、基本的には直感的な操作でOKなんですが、それぞれのカーブに理由付けをしてみると、S字カーブや逆S字カーブのようになる意味が解りますし、コントロールも自由にできるようになります。

S字カーブ

S字カーブサンプル

元画像

平坦で締まりも無く浅い印象なので、シャドー側を暗くしてみます。
S字カーブ調整1
全体的に暗くなり重みは出ましたが、上の窓ガラスの部分まで濃くなってしまったので、シャドー側はこのままでライト側を明るくします。
S字カーブ調整2
全体的に引き締まり、立体感が出てディティールも強調されました。
補正前・補正後比較
このように、平坦でコントラストの弱い画像に対して全体を引き締めたい・ディティールを際立たせたい・力強い印象にしたい場合などに、S字カーブが有効になります。

カーブを読む

【A:ハイライト   B:ライト側   C:中間調   D:シャドー側   E:シャドー】
S字カーブを読む
Aは固定のまま、Bまで緩やかにくだる。カーブは寝ているので、一番明るい部分からここまでは、少しずつゆっくりと濃くなっていく。

BからDまで急激にくだる。Cでカーブを立て、明暗の高低差を付けることでコントラストが強くなる。

Dから、固定された一番暗いEまで緩やかにくだり、少しずつ暗くなっていく。

逆S字カーブ

逆S字カーブサンプル

元画像

男性の顔や猫の辺りが暗く重い感じがするので明るくしたい。特にシャドー側が暗いので、シャドー側を明るくしてみます。
逆S字カーブ調整1
明るくなり男性の顔や猫の柄も見えてきましたが、空の色も薄くなってしまいました。ここは薄くしたくないのでライト側を戻します。
逆S字カーブ調整2
明るい部分はキープしながら暗い部分だけが明るくなり、コントラストがやわらいで優しいイメージになりました。
補正前・補正後比較
このように、コントラストの強い画像に対してシャドー側を明るくしたい・シャドー側の調子を出したい・柔らかい印象にしたい場合などに、逆S字カーブが有効になります。

カーブを読む

【A:ハイライト   B:ライト側   C:中間調   D:シャドー側   E:シャドー】
逆S字カーブを読む
AからBまでの明るさはそのままキープ。

BからDの始めにかけてCのカーブを寝かせ、明暗の高低差を少なくすることでコントラストを弱める。

Cの終わりからEにかけて急激にくだる。Dのカーブを立て、明暗の高低差をつけることでコントラストを強めて調子を再現する。

最後に

長くなりましたが、今回のこの解説だけでも暗い・明る過ぎる・メリハリがないなど、現場でよく出くわす問題が解決できるような気がしませんか? 画像補正の中で、トーンコントロールがかなりの割合を占めているということがお解りいただけたと思います。