補正してみよう #001

毎回さまざまな画像を選び、仕上がり目標を立てながら、実際に補正する要領で画像補正の手順や考え方を解説します!第1回は「色が浅くてネムい画像」の補正です。





はじめに

同じ画像を100人が補正したら、100人ともすべて同じ結果になることはありません。結果もさることながら、補正のやり方もいろんなパターンがありますし、「画像補正の基本」での解説だけでは伝えきれない部分もあります。

ここでは、ランダムに選んださまざまな画像を実際に補正しながら、その手順や考え方を実戦形式で見てもらおうと考えています。

補正を始める前にすること

画像のチェック

まずは、その画像がどんな状態なのかをチェックしましょう。ハイキー(明るめ)なのかローキー(暗め)なのか?色カブリはしていないか?。また、解像度やサイズなども確認しておきましょう。

補正のプランを立てる

どんな仕上がりにするか、ある程度のゴールを設定しましょう。「爽やかな感じに」「美味しそうに」「重厚感を出す」など、被写体やデザインイメージ、またはクライアントの要望などを考えながら、ゴールに向けての補正プランを立てます。実際の補正に入る前に、一度、脳内で大まかな補正をしてみるといいですよ。

それでは実際に仕上がり目標を設定して補正していきましょう。

色が浅くてネムい画像を補正してみよう

practice001

サンプル画像

補正

≫仕上がり目標
色が褪せている感じなので適正な濃度にし、もっとクッキリとした画像にしたい。

まずはハイライト(白)をどこにするか考えます。この画像で一番明るいところは空の部分ですので、[レベル補正]を開き、[情報]を見ながら一番明るいところを探します。
明るいところを探す
数値を見るとほぼニュートラルな白のバランスに近いので、セットインコピーで数値を白に揃えたいと思います。

セットインコピーの詳細、数値設定に関してはトーンカーブを制する者は画像補正を制す!【グレーバランス編】をご覧ください。この記事では、ニュートラルグレーの説明のためにハイライト・シャドー・中間調すべてセットインコピーで設定しましたが、シャドー及び中間調に関しては、補正に慣れるまであまり使わない方がいいでしょう。ハイライトでは白の部分もしくは白にしたい部分がある場合は、積極的に使っていい機能です。

右側のスポイトをクリックしてから、白にしたい部分をクリックします。
ハイライトをセットインコピーで揃える
ほぼニュートラルな白になりました。これで、この画像のホワイトバランスは決まりました。
ハイライト設定
次に、シャドーのレベルを調整します。
[レベル補正]のヒストグラムの山を見ると、左側がスッポリ抜けていますので、シャドーの三角形を山の左端までスライドさせ、256階調すべて使い切るようにします。

シャドー側のレベル補正
一旦[OK]を押します。だいぶ濃度も上がりクッキリとしてきましたね。
シャドー側の補正結果
次に、色のバランスを整えていきましょう。
色バランスが崩れているのはこの画像を見れば判りますが、ではいったい何を見て判断したらいいでしょうか?

画像の右側(赤く囲んだところ)に壁のようなものがありますね。材質は、古い建物のようですからおそらく石、もしくはコンクリートだと思います。だとするとこの色はグレーに近いはずです。今回はそう仮定してこの部分の色バランスを見てみましょう。
グレーバランス調整
ここで便利機能です。[トーンカーブ]の左下のマークをクリックし画像上でカーソルを動かすと、“その部分の濃度はカーブのこの辺りですよ”、とこの丸が動いて教えてくれます。(便利!)
トーンカーブ便利機能
せっかく教えてくれているので、この近辺の数値を[情報]で確認してみます。
R87・G95・B125、C78%・M63%・Y34%・K8%というバランスになっていますが、ここでニュートラルグレーの色バランスを思い出してみましょう。

ニュートラルグレーの詳細はトーンカーブを制する者は画像補正を制す!【グレーバランス編】をご覧ください。

ニュートラルグレー数値比較
先ほど確認した数値と、それに近い濃度のニュートラルグレーのバランスを較べてみます。CMYK値で見ると、両方ともC・Mはだいたい似たバランスですが、先ほど確認した数値はYが少ない数値になっていますね。これをニュートラルグレーのバランスに近づけるにために、Yの数値を増やす作業をしてみましょう。

[トーンカーブ]の[ブルーチャンネル]を下に移動します。下に移動するということは「増やす」ということでしたね。
ブルーチャンネル補正
一旦[OK]を押し、数値を確認してみましょう。
RGB値それぞれも同じような数値に近づいていますし、CMYK値もC・Mが減りYが増え、ニュートラルグレーに近いバランスになりました。
ブルーチャンネル補正後
画像を見てみると、青味が抑えられ建物の色が出てきました。左側の樹木も緑っぽくなっています。
数値的にCはそれほど減っていないのに対し、Yを大幅に増やすことで色味が復活しました。ということは、この画像は青カブリというより黄色味が足りなかったために青っぽくみえていた画像だということも判ります。
ブルーチャンネル補正後画像
もう少し調整します。
全体に中間調からシャドー側にかけてカーブを起ち上げたS字カーブでコントラストを付け、ブルーチャンネルでもう少し黄色味を増やしてみましょう。先ほどブルーチャンネルの中間調で増やした分も含めて、ハイライト側に黄色味が増えてしまっているので、S字カーブにして少し落とします。
トーンカーブ調整
こんな感じに仕上げてみました。“色が褪せている感じなので適正な濃度にし、もっとクッキリとした画像にしたい”という仕上がり目標は達成できました。
仕上がりイメージ
001仕上がりビフォーアフター

調整レイヤーを使おう

画像補正は、今回のように[レベル補正]→[トーンカーブ 全体]→[トーンカーブ ブルーチャンネル]→[トーンカーブ 全体]→[トーンカーブ ブルーチャンネル]→・・・と、ツールを行ったり来たりしながら仕上げるのが普通です。しかし、その都度ツールを開くやり方では、例えば“2回前に調整したトーンカーブをやり直したい”などという場合に困ることがあります。[ヒストリー]で戻ることも可能ですが、[調整レイヤー]を使う方が効率的で確実です。

[調整レイヤー]は[レイヤー]の下にある赤丸で囲んだアイコンをクリックすると、メニューが現れますのでそこから選択します。また[色調補正]のアイコンをクリックしても選択できます。
調整レイヤー選択
調整レイヤー選択2
[レベル補正]を選択すれば[レベル補正]のレイヤー、[トーンカーブ]を選択すれば[トーンカーブ]のレイヤー、とレイヤーが追加されていきますので、オリジナルの画像を残したままこのレイヤー上でそれぞれをコントロールすることができます。例えば[トーンカーブ]で「コントラストを調整するレイヤー」「色バランスを調整するレイヤー」という具合に複数のレイヤーを作る事ができ、行ったり来たりの調整も簡単にできるようになります。

このPSDファイルを保存しておけば、画像の修正依頼がきた時にも遡って修正ができますし、特にビギナーの方は積極的に使った方がいい機能です。
調整レイヤー
調整レイヤートーンカーブ

補正してみよう#001は以上です。
お疲れさまでした。