画像補正の基準となる白やグレーが無い場合の対処方法。

グレーバランスを理解し白やグレーを整えられるようになったら、次のステップへと進みましょう!
これまでこのサイトでは、グレーバランスを基準とするやり方、画像の中に白やグレーがある場合の補正を中心に解説してきましたが、そんな都合の良い画像ばかりではありませんよね。今回は、白やグレーが無い場合に何を基準に補正するのか?何を目安にしたらいいのか?について解説します。





はじめに

基準とする白が無い画像をどうするか? 実はこれ、画像補正ビギナーにとっては最初の難関と言えるかもしれません。実際、私も駆け出しスキャナーオペレーター時代にぶつかった最初の壁だったと思います。

ただ、完全に手前味噌になりますが、このサイトを最初から順に読んでいただいている方であれば(basic001・・・と番号表示にしているのも一応その為です。)、それほどややこしい話ではないと思いますので、以前の記事、特に、トーンカーブを制する者は画像補正を制す!【グレーバランス編】や、前回のPhotoshopで画像の「色」を自由自在にコントロールしよう。「色を理解する」も合わせて読んでいただけると解りやすいかもしれません。

白がある場合の画像補正

まずは、画像の中に白もしくは白にしたいところがある場合の、セットインコピーを使った色バランス調整のやり方をおさらいしておきましょう。

ワンクリックで白のバランスを整えられるセットインコピーとは?

セットインコピーとは、[トーンカーブ]または[レベル補正]で、白色点・中間点・黒色点の各スポイトをダブルクリックし次のような数値に設定しておくと、画像内の各ポイントをクリックするだけで、強制的にここで設定した色バランスに調整してくれる機能です。

特に、色カブリやバランスの崩れた白もしくは白にしたいところがある画像のホワイトバランスを整えるのに重宝する機能です。中間点(グレー)や黒色点(シャドー)のバランスもこれで強制的に調整することも可能ですが、クリックするポイントによっては意図しない結果になることもありますので少し注意が必要です。しかしながら、画像の状態を見極め、機能の特徴を理解して使用すれば大変便利な機能ですので、積極的に使って良い機能だと思います。
トーンカーブスポイト設定
それでは、全体に青っぽい次の画像で実際にやってみましょう。
[トーンカーブ]または[レベル補正]の白色点のスポイトをクリックしてから、画像の白くしたい部分(一番明るいところ)を探しクリックします。この画像では赤丸の辺りでした。
サンプル画像1
[情報]で確認してみましょう。白色点のスポイトに設定した数値に揃っていますね。
情報パネル1
白のバランスを整えるだけで、画像全体の青味も取れスッキリしました。
セットインコピーで補正
このように、セットインコピーという機能を使えば、ワンクリックで白のバランスを整えることが可能になります。

白が無い場合の画像補正

それでは本題に入りましょう。
画像の中に白やグレーが無い場合の色バランス調整は、ニュートラルグレーのような決定的な目安となるものがありませんので、各色の数値で判断することになります。これには純色濁しの関係など色の構成についての知識、プラス、画像がどう見えるかの感覚的な判断も必要になってきます。

重要なのはキャッチライトの次の色

画像補正の順序として、まず一番明るいところを探すというのがセオリーです。画像の中に逆光や金属の輝き等があれば、そこはキャッチライトにすることができますので数値的には(0%)になっても構わないところ。そのキャッチライトの次の段階がどのような数値バランスになっているのか?そして、その色が最終的にどのような色になっていくのか?が重要になります。

キャッチライトとは?
キャッチライトとは、印刷用語で網点がまったく入っていない白く抜けたハイライトのことを指します。CMYKではすべて(0%)、RGBではすべて(255)の数値で、強い光を表現する場合に意図的に設定したりします。
キャッチライト
キャッチライトの設定についての注意点は角版と切り抜きで気を付けたい画像補正のポイント。で解説をしています。こちらも合わせてご覧ください。

下図は、いわゆるニュートラルグレーのグラデーションです。キャッチライトの次の段階(赤枠)をとし、中間調までのニュートラルなグレーのバランスになっています。先述の白がある場合の画像補正でのセットインコピーのテストでハイライトの色カブリを整えましたが、その赤丸の部分がこの赤枠にあたるとお考えください。※あくまでイメージです。
ニュートラルグレーグラデーション
それでは、このグラデーションをにして考えてみましょう。
オレンジ系の純色(マゼンタ2%+イエロー4%)から(マゼンタ70%+イエロー100%)へと濃くなり、中間調からシアンの濁しが少し入ってくるグラデーションです。
オレンジグラデーション
画像補正のセオリー通りまずは一番明るいところ(キャッチライトの次の色)を探すと赤枠になりますので、試しにこの部分をセットインコピーでにしてみましょう。
オレンジグラデーション2
見た目ではちょっと判りづらいですが、赤枠は(シアン3%+マゼンタ2%+イエロー2%)で先ほどのニュートラルグレーのグラデーションと同じのバランスになりました。そしてここから中間調、一番濃いところまでもシアンが(+3%)入ってしまいましたね。色の構成からすると、オレンジ系の濁しであるシアンが増えたことで、少し濁ったオレンジ色になってしまったということになります。

このように、グレー系ではないところをセットインコピーで強引に白に整えてしまうと、その先の色にまで影響することがありますので注意が必要です。一番明るい(薄い)ところですので、白なのか色なのかの判断はなかなか肉眼では難しいですから、まずは一番明るいところの数値バランスはどうなっているのかを[情報]で確認し、その色がグレー系なのか?色系なのか?で判断しましょう。

一番明るいところがグレー系の白、もしくは、そう補正したいのであればセットインコピーで白に整えられる。色系であればセットインコピーで無理に整えない。と覚えておきましょう。そして、判断のつかない微妙な場合には「ヘタにいじらない!」というのも、画像補正には時として必要だったりします。



その色の濁しの量で判断する

それでは、次の白の無いサンプル画像で見てみましょう。
サンプル画像3
このような画像の場合、この段階ではとりあえず色味はあまり気にせず、まずは画像の中で明・中間・暗を表現することを考えます。メリハリも無く少し「眠い」印象ですので、明暗の差をつけるために[トーンカーブ]のハイライトポイント(RGBすべて)を左へスライドしカーブを立ててみましょう。

[トーンカーブ]の動き・効果についてはトーンカーブを制する者は画像補正を制す!【明るさ・コントラスト編】をご参照ください。

トーンカーブ調整
問題はどこまでスライドさせたらいいのか?何を目安にすればいいのか?ですね。
私の場合、よく目安にするのが空の明るい(色の薄い)部分です。空は青・シアン系ですので、その純色はシアンとマゼンタ、濁しはイエローになります。空の明るい(色の薄い)部分であればあまり濁しは必要ない、というより、爽やかな青空ですのでむしろここに濁しは入れたくありません。白丸で囲ったポイントの数値をご覧ください。左がスライド前、右(赤枠)がスライド後の数値です。これは、空の明るい(色の薄い)部分でイエローの数値が(0%)になる程度までハイライトポイントを左へスライドさせたものです。たったそれだけですが、メリハリが生まれスッキリとしましたね。
サンプル画像3トーンカーブ調整後
注意としては、空の色と言っても様々ですし、季節や天候によっても微妙に違いますので、絶対にこうすればOKという事でもありません。あくまで一般的に綺麗な青空の色バランスとしての目安です。空のイエローが(0%)になるまで全体にハイライトを切ったら、他の色が飛んでしまったなんて場合もありますので、その辺りも注意しながら切れるところまで切る。無理はしない。あくまで全体を見ながら。というのがポイントです。ここで空のイエローを(0%)にできなかったとしても、あとで[トーンカーブ]や[色相・彩度][特定色域の選択]などを使っていくらでも調整はできます。
サンプル画像3ビフォーアフター
それでは、別のサンプル画像でも見てみましょう。
全体的に濁しが多くくすんでいる赤いバラの画像です。一番明るいところを探してみると白丸で囲った辺りですね。数値バランスは(シアン18%+マゼンタ24%+イエロー53%)となっています。
サンプル画像2
赤・オレンジ系の純色はマゼンタとイエローですから、この場合、一番明るい部分にもかかわらずシアンの量が多く、そのせいで全体がくすんで見えていると考えられますので、シアンのハイライトを切ってみましょう。オレンジ系の一番明るいところに濁しのシアンはあまり必要ないので、[トーンカーブ]で[レッドチャンネル]のハイライトポイントを(0%)程度になるまで左へスライドさせます。
トーンカーブ調整
一番明るいところのシアンが切れ、それと共に全体のくすみも少し取れました。一番明るいところを設定する作業としてはここで一旦OKとし、あとは必要に応じて[トーンカーブ][色相・彩度][特定色域の選択]などで調整していきます。
トーンカーブ調整後

注意事項

“濁しを取って鮮やかになるのなら、もっともっと濁しを取って鮮やかにしたい!”と思いますよね。では、ここから更に[レッドチャンネル]のハイライトを切ってみましょう。
レッドチャンネルカットのテスト
かなりくすみも取れ鮮やかな赤にはなりましたが、バラの花の調子まで無くなってしまいノッペリ・ベッタリとしてしまいましたね。このことから判るように、濁しは色調だけでなく調子(立体感)にも係わるものでもあるので切り過ぎてもいけません。この画像をもっと鮮やかにしたいのであれば、調子に影響しない程度までハイライトをもう少し切るか、あとは[トーンカーブ]や[色相・彩度][特定色域の選択]などで調整するようにします。

先ほどの状態から更に補正したものがこちらです。[トーンカーブ]でS字カーブを使いコントラストを付け、[特定色域の選択]で[レッド系]のシアンを少し落としました。補正前と較べるとだいぶくすみも取れ鮮やかな赤になりました。
サンプル画像2ビフォーアフター

最後に

基準となる白やグレーが無い場合の一番明るいところを決める作業例として、ハイライト全体を切っていくパターンと、濁しの色だけを切っていくパターンをご紹介しました。もちろん、ハイライト全体をある程度切ってから個別の色を補正するのもアリですし、その逆だってアリです。他にも[トーンカーブ]は使わず[色相・彩度]や[特定色域の選択]だけで済んでしまう場合もあるでしょう。画像の状態や表現方法など一点一点違いますので方法もそれぞれですが、その色の濁しの量で判断をするという基準は変わりません。