レベル補正とトーンカーブの併用をオススメする理由。

[トーンカーブ]の話が続いたので、この辺で[レベル補正]にも触れておかないといけません。
一見似たような機能のような気はしますが、ちょっと違いがある[レベル補正]と[トーンカーブ]。
双方の特徴と良いところをうまく使って画像補正の効率をアップさせましょう!





違いを較べてみよう

画像補正のプロフェッショナルのほとんどが[レベル補正]と[トーンカーブ]を併用しています(多分)。作業の順序としては、1.[レベル補正]2.[トーンカーブ]。[レベル補正]で画像全体の大まかな土台作りをしてから[トーンカーブ]で色調やコントラストなどの細やかな調整をおこなうという流れです。

まずは本題に入る前に、[レベル補正]と[トーンカーブ]の機能を較べてみましょう。

共通する機能

サンプル画像1

サンプル画像1

レベル補正とトーンカーブ比較
左が[レベル補正]右が[トーンカーブ]です。
共通なものでいうと、まずは山のような形をしたヒストグラムです。若干形が違って見えますが、これはこのサンプル画像のヒストグラムで同じものです。

もう一つ共通なものは、ヒストグラム下にある三角形A・Bです。Aは一番明るいところで左にスライドするとより明るく、Bは一番暗いところで右にスライドするとより暗くなります。もうお気付きだと思いますが、[レベル補正]の入力レベルが[トーンカーブ]の横軸になっていますね。
ちなみに[レベル補正]の出力レベルは[トーンカーブ]の縦軸にあたりますが、特殊な効果を求める時以外はほとんど出番が無いのでここでは割愛します。

サンプル画像でテストしてみましょう。
Aのつまみをそれぞれ同じ数値(155)まで左にスライドさせてみると、双方とも同じ結果になりました。

サンプル明るく

テスト1

Bのつまみもまた同じ数値(75)まで右へスライドさせます。こちらも同様に同じ結果になっています。

サンプル暗く

テスト2

以上ここまでが[レベル補正]と[トーンカーブ]の共通の部分です。“え?だったらトーンカーブだけでいいじゃん”とお思いの方、それはある意味正解です。[レベル補正]でできることはほとんど[トーンカーブ]でできてしまうので、ここまでの作業ならば[トーンカーブ]だけで完結することは可能です。しかし、今回はきっちりと効率良く補正を進めるのが目的ですので、もう少しお付き合いください。

似てるけどちょっと違う機能

[レベル補正]には[トーンカーブ]には無いもう一つの三角形のつまみがありますね。真ん中にあるこのCのつまみは中間の明るさを調整するつまみになります。近くにある1.00という数値は255と0のちょうど真ん中だということを表しています。デジタル画像は256階調でできていますので、一番暗いところが0で一番明るいところが255、その真ん中ですからちょうど127のところということになります。ちょっとややこしいですね。
レベル補正グレーつまみ
このCのつまみを左にスライドすれば明るく、右にスライドすれば暗くなります。[トーンカーブ]ではカーブの中間を上下して調整しましたが、それとは少々効果が違いますのでテストしてみましょう。

レベル補正とトーンカーブの違い

テスト3

それぞれの中間を明るくしてみましたが、このように違う結果になりました。上の[レベル補正]で明るくしたものは、明るくというより全体的に薄くなっています。それに較べて下の[トーンカーブ]で明るくしたものは、ハイライト・シャドーはあまり変わらず中間調だけが明るくなりました。
※単純に違いを見較べるテストですので数値に関しては気にしないでください。



レベル補正の役割

では[レベル補正]は一体どんな場合に使えば効果的なのでしょうか?
そしてどんな効果が得られるのかも見ていきましょう。

ヒストグラムを整える

サンプル画像2

サンプル画像2

前述したように、デジタル画像は一番明るいところから一番暗いところまで256の階調でできていますが、この画像のヒストグラムを見てみると、左側の斜線部分、暗いところがスッポリ抜け落ちていますね。これは、この画像は256階調を全部使い切っていない画像だということを表しています。
サンプル画像2のヒストグラム
それでは[レベル補正]で調整していきましょう。左のシャドーのつまみをヒストグラムの山の端まで移動させます。数値が(25)になりましたね。このことから、この画像は0から255まで階調を使えるところを25から255までしか使っていない、ということが判ります。ここで一旦[OK]を押します。
ヒストグラムを整える1
もう一度[レベル補正]を開いてみると、数値(25)が(0)になり、ヒストグラムも0から255まで256階調すべてを使い切っているように変わりました。少し眠い感じがした画像のシャドーも締まりました。
ヒストグラムを整える2
サンプル画像2ビフォアアフター
別の画像でもやってみましょう。

サンプル画像3

サンプル画像3

今度は右側の明るいところがスッポリと抜けていますので、右のハイライトのつまみをヒストグラムの山の端(122)まで移動させます。
ヒストグラムを整える3
すると全体的に薄い画像になってしまいましたので、中間のつまみを右へ(0.70)移動し少し濃くしてみましょう。ここで一旦[OK]を押します。
ヒストグラムを整える4
もう一度[レベル補正]を開いてみると、数値(122)が(255)になり、256階調すべてを使っている画像になりました。暗かった画像にメリハリが付きましたね。
ヒストグラムを整える5
サンプル画像3ビフォアアフター
このように[レベル補正]では、256階調すべてを使い切れていない画像に対して、ヒストグラムを確認しながら修正することができます。少し語弊があるかもしれませんが正常な状態に戻してあげる作業と言ってもいいかもしれません。

明るさを整える

次にこちらの画像を見てみましょう。重厚感があり雰囲気的には良い感じですが、もう少し明るくしたいという場合にはどうすればいいでしょうか。

サンプル画像4

サンプル画像4

ヒストグラムでは、ハイライト・シャドーの階調の抜けも無く256階調すべてを使い切っていますので、先ほどのサンプル画像3のような方法は使えません。
明るさを整える1
このような場合には中間のつまみをスライドして全体の明るさを調整します。黒く潰れ気味だったトンネル内のディティールも現れましたね。
明るさを整える2
サンプル画像4ビフォアアフター
このように、全体をスーっと明るくするには[レベル補正]が向いています。実はこれを[トーンカーブ]でやろうとすると意外と大変です。「全体的に暗すぎる」「全体的に色がドギツ過ぎる」またはその逆であったり、「同一の紙面にレイアウトされる他の画像とのバランスを揃える」など、画像全体の明るさ調整を簡単に出来るのが[レベル補正]です。

トーンカーブで仕上げる

それでは、[レベル補正]が終わったこの画像を使って[トーンカーブ]で調整してみましょう。

レベル補正で整えたサンプル画像4

レベル補正で整えたサンプル画像4

トンネル内のディティールを出すことは出来ましたが、少しあっさりとしてしまったので、被写体が持つ雰囲気的にはもう少し重みを出したいところです。トンネル内のディティールはなるべく残しながらs字カーブ気味にして少しコントラストを強調してみます。
トーンカーブ調整1
もう少し「雰囲気」を出したいので、ブルーチャンネルを使って全体的に黄色っぽくしてみましょう。全体的に“こっくり”とした雰囲気に変わりました。
トーンカーブ調整2
サンプル画像4トーンカーブビフォアアフター
※各効果が解りやすいよう少々オーバーにやっています。

仕上がりをイメージして作業プランを立てる

[レベル補正]で画像全体の大まかな土台作りをしてから[トーンカーブ]で色調やコントラストなどの細やかな調整をおこなうという流れは以上の通りです。

順序が逆になってしまいましたが、ここで重要なことは[レベル補正]でどの程度まで整えるか?その後の[トーンカーブ]でどう調整するか?など、作業に入る前に画像をどう仕上げるかのプランを立てること。先述したように両者が似たような機能を持っていますので、それぞれの機能と効果を理解した上でプランを組み立てます。画像の状態や仕上がりイメージによっては[トーンカーブ]だけで済んでしまうこともありますし[レベル補正]だけで事足りる場合ももちろんあります。

今回の仕上がりイメージから組み立てたプランとしては、
1.トンネル内のディティールを出したかったので[レベル補正]で全体的に明るくしておく
2.トンネル内のディティールを残しつつ重厚感や雰囲気を出すために[トーンカーブ]で調整
という感じです。
元画像から較べるとこのようになりました。
サンプル画像4トーンカーブビフォアアフター

併用をオススメする理由

トーンカーブの操作は最小限にとどめたい

トーンカーブを制するものは画像補正を制す!【明るさ・コントラスト編】でも書きましたが、画像は一番明るいところから一番暗いところまでの美しい階調の連続で出来ています。[トーンカーブ]は自由自在な表現が可能な分、あまりゴリゴリやりすぎるとその美しい階調を壊してしまう恐れもある繊細なものです。

[レベル補正]で出来ることはほとんど[トーンカーブ]で出来てしまいますので、トーンのセクションをコントロールするのはやはり[トーンカーブ]がメインになります。しかし、ここまでの一連の作業([レベル補正]+[トーンカーブ])をすべて[トーンカーブ]でやろうとすると、先述したように少々大変な部分も出てきたり、かなり無理なカーブになることもあります。そんな時は無理をせず[レベル補正]の力を借りて合わせ技一本!といきましょう。

トーンカーブは常にゼロから始めたい

新たに[トーンカーブ]を開くと常にこの45度の対角線が現れますが、明るくても暗くても、綺麗でも汚くても、どんな画像の場合でも最初はこの形です。これは、現在の画像の状態をゼロとして“さぁここから始めますよ”という意味です。
トーンカーブ初期画面
画像補正を続けていると、画像を見ただけで“トーンカーブはこうしよう”という形が自然にイメージできるようになります。数値も大切ですが、画像の状態を見ながら直感的にカーブを操作できるようになることも大切です。その場合のスタートはいつもこの形から始まるのが基本形です。

それではサンプル画像3を、[レベル補正]を使わずに[トーンカーブ]だけで補正してみましょう。
[レベル補正]の時と同様に、右のハイライトのつまみをヒストグラムの山の端(122)まで移動させ、中間のトーンも調整します。
トーンカーブ調整3
ここから更に[トーンカーブ]で微調整を加えていく訳ですが、このカーブの状態から始めるとなると以降の補正イメージがしづらいですね。“だったら一回[OK]してまた始めればいいじゃん”と思われた方、はい、やってることはほとんど変わりませんのでこのケースではそれでもOKです。

しかしながら、このサイトを訪問していただいている方の多くは画像補正ビギナーの方が中心だと思われますので、“この画像はトーンカーブだけでイケるな”“これはレベル補正だけで大丈夫だろう”という判断は、数をこなさないとなかなか難しいものです。さまざまなタイプの画像を処理することを考えると、[レベル補正]で画像全体の大まかな土台作りをしてから、新たにそこをゼロとして[トーンカーブ]で調整をおこなうという流れを癖にしてしまった方が確実ですし、効率も良いと思います。私は画像を開くと勝手に指が[command+L]を押してしまうほど癖になっています(笑)。