何を見て判断する?「使える画像」「使えない画像」。

“この画像を使えるか確認してください”  よくクライアントや担当営業から言われますよね。
デザインの仕事をしていると、実にさまざまな画像が支給されます。プロカメラマンが撮影したバッチリの画像から素人さんが撮ったボケボケのスナップ写真、ケータイの写メ画像なんてのもあるんじゃないでしょうか。さて、“確認”といっても、一体何を見て判断すればいいのでしょう?





基本的なチェック

“データ容量が◯◯MBあるから大丈夫” と、データを開いてみることもせず判断していた人を見たことがありますが、これは問題外。必ずデータは開いてみましょう。ファイルが破損している場合もありますからね。画像が無事開いたら、[イメージ][画像解像度]を選び、画像データとして使えるかチェックをします。
基本的なチェック

1.[再サンプル]のチェックを外す。2.[解像度]に350と入力、もしくは[合わせるサイズ][自動解像度設定][画質 高い]。3.[幅][高さ]で画像サイズを確認。以上3ステップです。
※印刷での使用。仕上がりサイズが明確でない場合。

画像解像度とスクリーン線数の関係

では、先ほど入力した「350」という数字は一体どこから来たのでしょう???
これは印刷特有の「スクリーン線数」というものに関係しています。
以下、ちょっとややこしい話になりますが、これから画像を扱うにあたって大切な事柄です。

画像解像度とは?

デジタル画像は画素(ピクセル)の集合により形成されてます。単位は「ppi/pixel per inch(ピクセル・パー・インチ)」または「dpi/dot per inch(ドット・パー・インチ)」で表します。Photoshopでは「ppi」ですが、単位としてはどちらも同じことです。(私的にはdpiが馴染み深いので、以下dpiで表記します。)意味としては、1インチの中にピクセルがいくつあるか。72dpiなら1インチの中にピクセルが72個、350dpiなら1インチの中にピクセルが350個入っている、という意味です。

スクリーン線数とは?

印刷物は小さな網点の集合で形成され、その濃淡で階調を表現しています。単位は「lpi/line per inch(ライン・パー・インチ)」または「線(せん)」もしくは「ℓ(リットルではなくLineのエル、読み方は同じく線)」で表します。175線であれば1インチの中に175本の線があるという意味ですが、この「線」とは、175本の走査線があり、その電気信号によって網点を生成しているというイメージだと解りやすいでしょうか。150線、133線と、線が少なくなっていけば生成される網点は大きく荒くなっていきます。
スクリーン線数は、印刷する用紙や用途によって変える必要があり、コート紙・アート紙などを使用する一般的なカラー印刷では175線。上質紙などインクがにじんでしまう紙や1〜2色印刷の場合は150線・133線・100線。新聞などは80線の荒い線数になります。

一般的に、画像解像度はスクリーン線数の2倍必要、と言われていますので175×2=350で「350dpi」になるというわけですね。これ以上はもっとややこしくなるので「解像度は線数の2倍」と覚えておけばOK。一般的なカラー印刷物であれば、350dpi時のサイズを確認すれば間違いないということですが、用紙・線数などが分かっていれば、それに対する数値を入力します。

画像解像度は高けりゃいいってわけじゃない

例外として、美術印刷などで用いられる「高精細印刷」という300線・400線などの細かい網点で印刷されるものがありますが、もちろん、画像解像度はスクリーン線数に合わせ高くなっていきます。網点が細かくなればより精細な印刷が可能にはなりますが、専用の用紙でなければ網点が潰れて逆に仕上がりが汚くなるなど、品質管理は難しくなります。

高精細印刷でない限り、一般的なカラー印刷では、闇雲に画像解像度だけ上げても意味はありません。それどころかデータ量が増え、デザイン・レイアウト作業にも支障をきたしますので注意が必要です。

デザイン・レイアウトに適切な画像サイズか?

次の画像がクライアントの要望とともに支給されたとします。

サンプル画像

印刷条件とクライアントの要望

  1. A4フルカラーのチラシ制作
  2. オフセット印刷で用紙はコート紙を使用
  3. この画像をA4サイズ横(210mm)全面に配置したい

それでは画像をチェックしていきましょう。

解像度チェック

1.基本的なチェックの通り、再サンプルのチェックをはずし、一般的なカラー印刷で用紙はコート紙ですから、解像度は350dpiにします。

解像度変更

225mmあった横幅が46mmになってしまいました。
解像度変更後

これをイラストレーターに配置し、A4の横幅一杯(210mm)まで拡大すると、拡大率は450%になります。無理に拡大したので、だいぶギザギザが目立ちますね。レイアウトソフト上での拡大率は、基本的に原寸(100%)が理想です。会社によって許容範囲は変わると思いますが、やむを得ず拡大するならば120%くらいまででしょうか。

イラレで拡大

それでは、イラストレーター上ではなく、フォトショップで450%に拡大してみましょう。
Photoshopで拡大
イラストレーター上で拡大したものよりいい感じはしますが、ぼんやりした画像になってしまいました。

Photoshopで拡大

したがってこの画像は、至近距離で見るA4チラシ全面での使用は品質的に厳しい、使用しない方がいい。という判断になります。

ちなみに、画像解像度350dpi時のサイズがA4にほぼ原寸で対応できる画像だとこんな感じです。チラシで使うならこれくらいの画質は欲しいところです。

オリジナル画像

用途によってOKになる場合も

今回のサンプル画像はさすがに無理ですが、ポスターのような大判で扱う場合は、また考え方が違ってきます。ポスターや看板などは至近距離で見るものではありませんので、150dpi程度、もしくはそれ以下でも大丈夫と言われています。解像度を落とすことでデータ量も抑えられるので理にかなっていますね。

最後に

“自宅のプリンターでは大きく出力できたのに” “最新のデジタル技術でピンボケなんて簡単に直っちゃうんでしょ” など、一般の方には知る由もない情報や誤った認識は、こちらから提起し納得してもらわないといけません。ただ、実際には「使えない」ということを伝えても「それしかない」と言われることがほとんどだったりします。それではどうしましょう? 新たに撮影する? 著作権フリーの似たような画像を購入する? 品質は妥協してこのまま使う? などの選択肢から、クライアント側に選択してもらうことで、後々のトラブルも防げます。

いずれにしても、不明な点は印刷会社などに相談・確認し、これらのチェックは早い段階で済ませておきましょう。校了・印刷間際になって「使えない」と伝えても、代わりの画像を用意するのが難しくなるのは当然ですし、「使えない」「拡大は厳しい」「ピントがボケている」などの「こちらでは責任を負えない情報」をクライアントと共有しておくことが大切です。